2024.03.18 執筆
2024.03.20 公開

勇者が上手に蕩けるまで

 通い慣れたハテノの坂道を急ぎ足で下ってゆく。
 夕食後にゼルダからちょっとしたおつかいを頼まれたのが数刻前のことだ。リンクとしては用件が片付いたらすぐに帰ろうと思っていたのだが、生憎プルアに捕まってしまった。実験だのなんだのに付き合っている内に、すっかり日が落ちてしまったのだ。
 東の空に昇り始めた月を見上げて、リンクは帰路を急ぐ。ゼルダの家に半ば転がり込むように住み始めて半年近くなるだろうか。もうすっかり我が家と呼べる程度には、馴染みが出来た。
(早くゼルダに会いたい)
 この時間帯なら井戸にある研究室から戻っている筈だ。ナツユキから貰った茶葉があった筈だから、二人でお茶にしてもいいかもしれない。
 そんなことを考えていると、見慣れた我が家が近付いてくる。少し前に新調して貰ったドアは快調で、リンクはいつものように足を踏み入れた。
「ただいま……って、あれ!?」
 見慣れた我が家に帰ってきたつもりが、異国情緒漂う空間に様変わりしていた。
 正確に言えば間取りはいつもの我が家だ。しかし、色とりどりの垂れ布があちこちを彩り、黄金の美しい宝飾品が品よく飾られている。いつもの照明は落とされていて、代わりに蝋燭を使った間接照明がほの暗い室内を照らしていた。
「ど、どういうこと!?」
「おかえりなさい、リンク」
 声を上ずらせるリンクとは対照的に、鈴を転がすような楽しそうな声が聞こえる。言わずもがな、この家の主でもあるゼルダだ。一体どういうことなのか問いかけようとして、リンクは思わず目を丸くしてしまった。
「どうでしょう。似合いますか?」
 ゼルダは部屋の調度品に合わせて、エキゾチックな衣装を身に纏っていた。その場でターンすると、薄い布地がふわりと揺れる。
「凄く似合ってる。でも、どうしてゲルド風に?」
 普段は清楚なゼルダもゲルドの口布や露出した肌の効果も相まって、どこか妖艶な雰囲気がある。思いがけずどぎまぎとしてしまうリンクを前に、ゼルダは悪戯が成功したみたいに嬉しそうに目を細めた。
「ふふ、詳しくは後で話します。まずはここの椅子に座って」
 言われるがままに引かれた椅子に腰かけると、ゼルダはいそいそと大きなたらいを引っ張り出してきた。
「ポカポカハーブ?」
 たらいの中に入っているのは、ゲルド砂漠で見かける香草だ。食べると身体がポカポカする効能がある。料理して食べたりすることはあっても、たらいの中に並べられるのは初めてだ。
「ここに人肌に温めたお湯を入れます」
 両手で大鍋を持ってきたゼルダがたらいの中にお湯を流し入れると、香草のなんともいい香りが辺りに漂い始めた。
 指先でお湯の温度を確かめたゼルダが、いそいそとリンクのブーツに手をかける。
「わ! ぜ、ゼルダがするようなことじゃないよ!」
「リンク。動かないでください」
「はい」
 悲しいかな、こればかりは染みついた習性だった。ゼルダに命じられると、リンクはその通りに動いてしまうのだ。
 動きを止めたリンクに満足そうに頷いて、ゼルダはリンクのブーツに手をかけた。白い指先が、豆を何度も潰した傷だらけの裸足に触れる。
「お湯の中に足を入れますね。このままゆっくりしてください」
 ポカポカハーブ入りのお湯の中に足を入れると、じんわりと温かさが広がってゆく。思いがけない展開だが、これはこれで気持ちがいい。リンクが目を細めていると、次にゼルダは茶器を持ってくる。
「私がブレンドしたハーブティーです。体内に滞っている老廃物や毒素を排出するデトックス効果がありますよ」
 飲んで下さいと差し出されると、リンクに断る理由はない。温かいハーブティーに口を付けると、爽やかな香りが鼻から抜けた。
「……飲みやすいね」
「でしょう? 自信作です」
 口にして、満足そうに胸を張っているゼルダは可愛い。ハーブティーで一息を付けた効果なのか、その頃にはリンクも落ち着いて辺りを見渡すことが出来た。
 推測するに、このゲルド風の催しはゼルダがリンクの為に用意したものなのだろう。彼女のことなのだから、きっと何か意図あってのことに違いない。だとすれば、素直に享受するのがゼルダの為になるだろう。
 伊達にゼルダ中心に世界が回っていると言わしめられた男ではない。ゼルダの為と分かるや否や、リンクはよく躾られた犬のように行儀よく居住まいを正した。
「次は何をすればいい?」
「そろそろ温まった頃合いだと思いますので、ベッドに行きましょう。服は脱いでくださいね」
 さらりと告げられた言葉に思わず目を丸くしてしまう。
「ふ、服を?」
「はい。これからリンクにはアロママッサージを受けて貰いますから、服を着ていては出来ませんよ?」
「そういうこと……」
 経験はないが、肌にオイルを塗ってマッサージをするものだと記憶している。服を着ていては出来ない類の施術なのだろう。とは言え、年頃の健康なリンクとしては、ベッドという単語に反応してしまうのは致し方ない。
「さあ、せっかく温めた身体が冷えない内に」
 ゼルダに背中を押されて、二階へ上がる。
 言われてみれば、確かに身体がポカポカとする。たらいのお湯も意外に侮れない。
 そんなことを考えながら、リンクは上着とズボンを脱いだ。回生の祠から抜け出した頃は、パンツ一丁でハイラルを練り歩いたものだが、ゼルダの前で服を脱ぐというのはどうにも落ち着かない。ドキドキと心臓が音を立ててしまうのは不可抗力というものだ。
 これでもかとタオルが敷き詰められたベッドの上にうつぶせになるよう指示されたので、言われた通りに横になれば、ギッと軋む音が耳に届く。
 枕で視界が遮られるので、聴覚が敏感になっているのだろう。無駄に想像力が掻き立てられてしまう。
「オイルをつけますね」
 ゼルダがそう言うや否や、とろりとしたものが背中に流されるのが分かった。
「あ、これもポカポカハーブなんだ」
「よく分かりましたね。香料に使ってます」
 爽やかな香りがいいですよね。
 口にしながらも、ゼルダの手付きは淀みがない。リンクの背中に垂らしたオイルをまんべんなく引き延ばしていく。
「では腰から背中にかけてマッサージをしていきますね」
 柔らかな手のひらがリンクの肌に触れる。
 今でこそ小さな家に住んでいるが、かつてゼルダはハイラル城に身を置き、多くの者に傅かれていた王族だ。普通に考えるなら、他者へのマッサージなんて行ったことすらない筈なのだが。
(うまい……!)
 リンクもびっくりの指使いだった。
 絶妙な力加減で、ゼルダは的確に凝りを探り当てている。
「痛くはありませんか?」
「大丈夫。むしろもうちょっと強くしていいくらい」
「分かりました。じゃあもう少し強めに揉みますね」
 恐らく背中に塗ったオイルが潤滑油になっているのだろう。ゼルダの指圧でゆるゆると凝りがほぐれていくのが分かる。
「気持ちいい~」
 蕩けるみたいだ。
 こんなに気持ちよくしてくれるのなら、後でゼルダにもマッサージしてあげよう。基本的には奉仕したいリンクがそんなことを考えていると、ゼルダの指先が脇腹にまで上がってきた。
(……?)
 腰から脇にかけて流すような手つきで触れてくるのはいい。ただ、指が内側まで入り込んでくるので、時折胸の先端に触れられるのが気になった。
「えっと、ゼルダ……」
「どうかしましたか?」
 不思議そうに首を傾げるゼルダを前に「乳首に手が当たって気になるから、どけてくれない?」と言うのは憚られた。
「な、何でもない」
 ゼルダの手付きは迷いがない。偶然、うっかり触れてしまっただけだろう。自分にそう言い聞かせ、リンクは頷いた。
「オイルを足しますね」
 ゼルダは甲斐甲斐しくリンクの肌にオイルを塗り込んでいく。その指先が何度も往復されて、丸くなった先端を引っ掻いた。
「……っ」
「痛くはありませんか?」
「痛くはないけど、そこ……」
「どこですか?」
 ゼルダの指先は円を描くように動いている。自分でも触れたことのないような優しい動きで触れられて、思わずリンクは身を捩った。
「ち、乳首は触らなくてもいいんじゃないかなっ!」
 羞恥に耳の先が赤くなることを理解しながらも、努めて平静を保ってリンクは告げた。
「いいえ」
 対するゼルダは至極大真面目な顔をしていた。真顔で無慈悲なことを口にする。
「ここもよく凝っているので、マッサージしておきましょうね」
「ひっ!」
 予告なく先端を摘ままれて、思わず変な声が漏れてしまった。慌てて両手で口を噤む。
 いつもだったら、リンクがゼルダにしていることだ。だけど、まさか自分がされることになるだなんて思ってない!
 リンクが口を噤んだことをいいことに、ゼルダの指先はまるで生き物みたいに蠢いていった。
 円を描いて焦らすような動きをしたかと思えば、時折悪戯に爪先でひっかいてみせる。かと思ったら、親指と人差し指で摘ままれて、もうどうしていいのか分からない。
 一体、どれくらいの間耐えていたのだろう。ゼルダの指先が離れていくのが分かって、ようやくリンクは止めていた息を吐き出した。そうでもしなければ、変な声が出てしまいそうで危なかったのだ。
「次は臀部のマッサージに移りますね」
 だから、ゼルダの言葉に反応するのが僅かに遅れた。
 そして、その僅かな時間が命取りだった。
「下着を下げます」
「!?!?!!?」
 ゼルダの細い指が下着を引き下ろした感覚があって、リンクは今度こそ度肝を抜いた。
「引っかかっちゃうので、横向いてくださいね」
「だ、だめ! 待って、ゼル……っ」
 ダ、と言いかけた名前は、結局情けない声に置き換わってしまった。下着が引き下ろされたと同時に、ぷるんっと張り詰めた己自身とご対面してしまったからだ。
「まあ」
 穴があったら入りたいというのはこういうことを指すのだろう。まさか乳首を弄られてこんなになってしまうだなんて、自分でも思ってみなかった。
「……ごめん」
 情けないやら泣きそうな気持ちでなんとか声を絞り出す。
 しかし、そんなリンクに反して、ゼルダはまたもや信じられないことを口にした。
「血流が集まっていますね。先にこちらのマッサージに移りましょう」
「や、それは、ちょっ……んんっ!」
 静止の声を上げるよりも、ゼルダの指が触れる方が早かった。ぱんぱんに膨れ上がった欲望は、優しく撫でられるだけでもう弾けそうになってしまう。
(うま……っ!?)
 いつも奉仕するのはリンクの方で、ゼルダに前戯を頼んだことはなかった。彼女自身も男性を知るのは初めてだったことから鑑みても、行為自体が初心者であることは間違いない。
 だというのに、この指使いは何だ。
 まるでゼルダの指はそれ自体が意志を持っているかのように、リンクの気持ちのいいところを的確に突いてくる。
「っぁ……!」
 乳首を散々弄られて、焦らされた身体の限界は早かった。
 ぴゅっと勢いよく飛び出した白濁液がゼルダの顔にかかってしまう。
「はあ……はあ……っ……ぅ、ごめん……」
 せっかくの衣装を汚してしまった罪悪感が口をついて出る。そんなリンクを前に首を振り、ゼルダは見せつけるように指先で精を絡めみせた。
「毒素が抜けましたね。見てください、こんなにねっとりとして濃厚……」
 口布を捲り上げたゼルダがぺろりと赤い舌で舐めとってみせる。
「リンクの味がします」
 ここまでされてしまえば、一連の行為が単なるマッサージでないことは明白だ。何よりやられっぱなしというのはリンクの沽券にかかわる。ゼルダの腕を引き寄せ、リンクは彼女をベッドに縫い付けた。
「これだけ焚きつけたんだから、いいよね」
 低く、囁くように告げる。ゼルダがリンクのそういう声に弱いのは知っていた。だから、わざとよく聞こえるように耳元で囁いた筈だった――のだが。
「駄目です。施術が終わっていません」
「え、ええー……」
 きっぱりと断られてしまった。
「今日はリンクに気持ちよくなって貰うために、たくさん準備したんです」
 部屋の飾りつけも、ゲルドの衣装も、マッサージの為に用意した備品だって。
 言われてみれば、ただえっちなことをする為にしては、些か手が込み過ぎている。ゼルダがリンクに気持ちよくなって欲しいという気持ちに嘘偽りはないのだろう。
「今日は私がリンクに触れさせて」
 恋人の真摯な想いは勿論のこと、ここまで言われてしまっては、無下に出来るリンクではない。
「……分かった。今日はゼルダに任せるよ」
「ありがとうございますっ!」
 ぱっと花が咲いたようにゼルダは笑う。
 こんな風に笑顔になってくれるなら、たまにはこういう趣向もいいかもしれない。そんなことを考えていると、リンクの拘束から抜け出たゼルダがベッド下の収納から何かを取り出してきた。
「では、次はこれを使いましょう!」
「待って」
 確かに任せるとは言った。だけど、その形状はどう考えても想定外だ。
「一応確認だけど、それって使うのは……?」
「? リンクですよ?」
 一体何を当然のことを。そう言いたげなゼルダを前に、間違っているのは自分の方かとリンクは頭を抱えたくなった。
「わ~お……」
 ゼルダが手にしているのは、どこかで見たことのある緑色をしていた。ついでに言えば、棒状の形をしていた。しかも気のせいでなければ、とてつもなく大きい。
「ゾナウギアで流用できそうなものがありましたら、自作してみました。効果は十二分に得られます」
 どう見ても、アレだ。ストレートに言うと、リンクの前にもついている臨戦態勢の男性器だ。どこに収納する気だというのは、怖くてあんまり聞きたくない。
「勿論、いきなりは挿れませんよ。裂けちゃったら大変ですから」
 さらりと怖いことを言ってる。
 任せるとは口にしたものの、貞操を失うことになるとは思っていない。流石にこればかりは断ろうとリンクは起き上がろうとしたが、それよりもゼルダが圧し掛かってくる方が早かった。
「ふふっ、見てください。物欲しそうにしているのが分かりますか?」
 それはゼルダの指使いがうますぎるせいだと言いたくても、うっかり口を開こうものなら情けない声が出てしまう。
 再びリンクをしごき始めたゼルダの前に、なす術もなくリンクは身体を震わせた。
「!」
 右手はせわしなく動いているのに、ゼルダの左手がその入り口に辿り着くのが分かった。咄嗟に肩を強張らせるものの、そんなリンクの動きを予期していたかのように、ゼルダが〝イイところ〟に触れる。
「んッ♡」
 思わず零れた声は、自分でも思ってみなかったほど甘ったるかった。ゆるゆると左指が一本、リンクのナカに侵入してくる。
「~~~~っ♡♡♡」
 異物感に拒否反応を示すよりも、ゼルダの前から与えられる刺激が気持ちよすぎて身体が震えてしまう。イキたい。だけど、イく寸前のところで止められて、また高められて。肝心なところで何度もお預けを喰らって、頭が馬鹿になりそうだ。
「ゼルダ、もうイきたい……っ」
「頑張って! 指がもう三本目になりましたよ」
「へ、あぅ……っ!?」
 いつの間にかたっぷりとオイルを濡らした指が三本にまで増えていた。
 信じられない。思わず目を見張るその隙を見計らっていたかのように、ゼルダの指はリンクを高みへと導いていった。
「んんんんんんっ♡♡♡」
 再び精が零れ落ちる。与えられた快楽の余韻で、ぐったりとベッドに横たわるリンクのその場所に、ぴたりと何かが触れる感触があった。
「ぁ、う……」
 待って。そんな大きいの入らない。
「無理だっ……」
 言い終わるよりも先に、ずんっ、と異物が侵入してくる。
「大丈夫。しっかりとほぐれてますよ」
 そうじゃない。
 やっぱり抗議は声にならなかった。
「おッ♡」
 この指に屈してしまったが最後、色んな尊厳が失われてしまうと分かっているのに、へこへこと動いてしまう腰が止められない。
「ああ、リンク。あんまり動くと抜けてしまいます」
 尻から抜け出たゾナウギアをゼルダが甲斐甲斐しく挿れ直す。セットと言わんばかりに前もしごかれるので、脳が〝気持ちいいコト〟と認識するのがまた罪深い。
「ぁ……はっ、ぅ……♡」
「凄いです、リンク! 全部挿れましたよ!」
 半ば朦朧とする意識の中で、眩しいゼルダの笑顔を見ていると「喜んでくれるならいいかもしれない」というどこまでも奉仕気質な自分が鎌首をもたげてくる。
「ちゃんと気持ちよくなりましょうね♡」
 言うや否や、ゼルダが手元で何かを押したのが分かった。
「~~ッ♡♡♡」
 咄嗟に、びくんと身体が跳ねるのが分かる。
「やぁッ、それぇ……っ、震え……♡」
 口から出る言葉は甘ったるく、思わず涎が零れ落ちてしまう。お腹の底からぶるぶると震える振動になす術もなく身体を折り曲げるのと、ゼルダが前に口を付けるのはほぼ同時だった。
 柔らかくて温かい口内に包まれて、お腹の中は揺らされて、どうやって正気を保てばいいのか教えて欲しいくらいだ。頭の中をビリビリと白い稲妻が駆け巡っている。
 気持ちいい。
 気持ちいい。
 全部、出ちゃう……!
「っぁああ、イく――ッ♡♡♡」
 喉から声が迸るのと同時に、唇から離された己自身から何かが飛び出したのが分かった。
「はぁっ……はぁっ…ぁ……?」
 音が聞こえるような気がする。まるで小さな滝から流れ出す水のような。
 息の上がる身体を恐る恐る見下ろしてみると、萎んだ自身の先からちょろちょろと小水が溢れ出ているのが分かった。
「!?!?!!?」
 信じられなかった。童顔だなんだと散々言われてきたが、これでも立派に成人を迎えた大人だ。そんな勇者がこんな、小さな子供みたいな粗相をしてしまうなんて。
 しかし、リンクの意思に反して、ちょろちょろと小水を垂れ流す下半身は止まってくれなかった。
「あ、ああっ……!」
 止まれ。
 止まれ。
 必死に念じているのに、一度溢れた水は止まってくれない。切実なリンクの想いとは裏腹に、敷き詰められたタオルは小水を含んでどんどん湿っていく。
「ごめんなさいっ! ……ごめんなさい……」
 とんでもない姿を見せてしまった。
 ゼルダに嫌われてしまったらどうしよう。大人なのに。勇者なのに。
 どんどん血の気が下がっていく。ゼルダの顔を見ていられない。
 不意に、ふわりと抱きしめられた感触があった。
「大丈夫ですよ」
 ゼルダだった。
「頑張りましたね。いっぱい気持ちよくなれましたね」
 そう口にして、いい子、いい子、と白い指先が優しく頭を撫でてくれる。
「リンクはいつだって一生懸命頑張って、本当に偉いです」
「でも、こんな……情けなくて、汚い……」
 目尻に浮かんだ涙に、ゼルダがそっと口付ける。
「そんなことはありません。普段の格好いいリンクも好きですが、私は……今日みたいな可愛いリンクも好きですよ」
「かわ、いい……?」
「ええ。だって私だけが見られる特別なリンクですもの」
 恥ずかしがらなくたっていいんです。そのままのリンクのことを受け止めたいから。
「ですから、私にありのままの貴方を見せてください」
 そう口にして、ゼルダは微笑んだ。
「ゼルダ……」
 失望されるかと思っていた。だけどゼルダはにっこりと笑って、リンクを抱きしめてみせたのだ。
「リンクが気持ちよくなってるのを見てたら、私も……」
 口にして、ゼルダは少し恥ずかしそうにゲルドの装束を引き下ろした。淡い色彩のショーツの下はすでにとろとろに蕩けて糸を引いている。
「あ……♡」
 ぷちゅ、と音を立てて先端が入り口に宛がわれた。そのまま馬乗りになったゼルダの腰がゆるゆると落ちてくる。
「んん……っ♡」
 こんな風に焦らされて、もう我慢なんて出来ない。
 ほとんど無我夢中になってリンクは腰を突き上げていた。しゃん、とゼルダが身に着けていた宝飾具が揺れる。
「ひゃんっ♡」
 ゼルダの唇からも甘い声が零れ落ちる。肉付きの良いゼルダの身体はリンクを飲み込むかのように絡みついて、奥へ奥へと誘おうとしている。応えるように、リンクは腰を突き上げた。
「あっ、あっ、リンクっ♡ 私、もう……♡」
「俺も……っ!」
「んっ♡ 一緒、に……♡♡♡」
 腰の動きが一層激しくなる。揺れ動く鮮やかな色彩の中で、ゼルダの指先が伸ばされるのが分かった。
 だから、リンクは無我夢中になってその手を掴み返したのだった。

   * * *

 多分、ずっと不安だったのだと思う。
 百年失って、万年失った。
 手放さないと誓ったものが手を離れていく、あのよるべない気持ちがさざなみのように押し寄せてきて、結んでも、結んでも、ほどけてしまうようで怖かったのだ。
 まどろみの中で、温かな手のひらが頬を撫でたような気がした。
「どんな貴方でも私は受け入れますから」
 瞼を押し上げると、綺麗なエメラルドグリーンの瞳の中に自分の姿が浮かび上がる。
「……がっかりしたりしない?」
「とんでもない」
 ゼルダは屈託なく顔を綻ばせた。
「だから、安心してくださいね。……そもそも、ハーブティーには利尿作用もありましたし」
「えっ、何か言った?」
「ううん、なんでも」
 ありのままの貴方を見せてくださいね♡
 口にして、鈴を転がすように笑う。

 たった一晩でとんでもない性癖を引き出していったポテンシャルの高すぎるゼルダを前に、リンクが新たな扉を開かれていくのは、これとはまた別の話だ。

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