2
「雨降って地固まる……って感じかしらネ」
結局、一日をベッドで過ごすことになったその翌日。一日ぶりにやってきたリンクとゼルダを前にして、プルアは開口一番にそう口にした。何はともかく、丸く収まったようで良かったわ、とも。
ゼルダの髪を切って貰ってそのままになっていたのだ。色々世話になった手前、これからの見通しをまず彼女に報告すべきだろう。そういうことで、二人は研究所まで足を運んだのだった。
二人の関係の変化を口にしなければと思っていたにもかかわらず、こうして改めて指摘されるとなんだか気恥ずかしい。ほんのりと頬を赤く染めるゼルダに代わるように、口を開いたのはリンクだった。
「旅も一区切りついたことだし、当分はハテノ村の俺の家で過ごそうと思ってるんだ。……ゼルダも一緒に」
「あら、良かったじゃない」
「……プルアは驚いたりしないのですね」
「今更って感じだし~。大体、昔から姫さまもリンクもじれったかったのよ。当時は身分もあったから難しかっただろうけど。まあ、今にしてようやくって感じよネ」
「そ、そうだったのですか……!?」
ゼルダは目を丸くしている。プルアの言葉はリンクにとっても予想外のもので、思わず呆気に取られて仁王立ちしている彼女を見下ろしてしまった。
「気が付いてなかったのはアンタ達だけだったんじゃないかしら? 大体みんな気が付いていたわよ」
「わ、私達だけ……!?」
あっけらかんと告げられた言葉に、再びゼルダは目を白黒させる。プルアだけでなく、他の英傑達……あるいはインパやロベリーにまで知られていたのだろうか。そうだとすると、あまりにも気恥しい。
「……マジ? 口に出した覚えはなかったんだけど」
「態度見てたらバレバレよ」
ゼルダの知る限りリンクが口にしたのはあの暗い森のやり取りだけである。そうだというのに、ばっさりと言い切ったプルアの断言ぶりに、そこまで分かりやすかったのかと頭を抱えるしかない。
……確かにあの時は目の前のことに精いっぱいだったけれどもっ! リンクだってお付きの騎士として立派に務めてくれていたわけだし、その……。
「何はともかく落ち着いたようで良かったわ」
赤くなったり青くなったりとせわしなかったゼルダを現実に引き戻したのもまたプルアの言葉だった。その声音は、思いがけず優しい。
リンクとゼルダは顔を見合わせ、それからまるで息を合わせたかのようにお互い顔を朱に染めて俯いた。
「おめでとう、姫さま。ちゃーんと幸せになってもらわなくちゃ困るんだから!」
「プルア……」
伸ばされた指先は短かった。しかし、触れれば確かに温かい。ゼルダはそっと目を閉じると、プルアの温もりに甘えるように少しだけ寄りかかったのだった。
それから、研究所ではプルアとシモンを交えて、これからのことを話した。
ハテノ村で当面生活していくこと。その間、リンクの家で過ごすことになるということ。暫くは生活の基盤を固めるために忙しくなるが、落ち着いた頃にゼルダはプルアの研究を手伝いたいと考えていること。
「また折を見て旅に出るかもしれないけど、当分はそんな感じで考えているんだ」
これも二人で決めたことだった。ペンダントを作り直すためにあちこち歩き回ったものの、ハイラルはまだまだ広い。ガノンを打ち倒し、ようやく平和な世の中になったのだ。まだ知らぬ土地を見て歩きたいと思うことは、旅をしてきた二人にとってごく自然な流れだった。
ハテノ村に滞在する間は研究の手伝いをする以上、いたりいなくなったりするのはプルアの迷惑になるかもしれませんが……。申し訳なさそうに口にするゼルダを前に、プルアは緩く首を振る。
「いいじゃない。ゆっくり二人で楽しんでいきなさいな」
そう口にして、プルアはにっこりと破顔した。
使命という名の責務に押しつぶされそうになっていた百年前のゼルダを知っているからこその言葉だったのだろう。浮かぶ笑みも自然と優しいものになる。
「……はい」
釣られるようにして、ゼルダもまた淡く微笑んだ。
これからのことを考えると、やることが山積みでどれもこれもが大変だ。だけど、その一つ一つがこれからの自分たちの生活を形作っていく。そう考えると、なんだか無性に愛おしかった。
* * *
「プルアへの報告は済みましたし、ひとまず生活に必要なものは買いました。サクラダさんへの相談は後日にすることにして……」
指折り数えるゼルダを前に、リンクは苦笑した。
「もう今日は十分だよ。あとのことはゆっくりやっていけばいい」
これからの時間はたっぷりあるんだから。
優しくそう目を細められると、ドキリとしてしまう。胸の鼓動に気が付かなかったふりをして、ゼルダはテーブルの上にあったコップに口を付けた。火照った体に冷たい水が染みこんでゆく。
「早めに取り掛かれば、その分早く生活が整います。せっかくリンクと一緒に暮らすのですから、なるだけ快適にしておきたいじゃないですか」
「うん。ゼルダが張り切ってくれるの、すごく嬉しい」
ニコニコと相好を崩しながら、リンクはずいとゼルダに詰め寄った。
「だけど、それはそれ。ゼルダ、まだ本調子じゃないでしょう」
無理は駄目だからね。
口にして、リンクはひょいとゼルダを抱き上げた。今日一日、彼女の歩き方がおかしかった理由に察しがつかないほど鈍感でもない。ゼルダを抱き上げたまま、リンクは階段を登りき、一人用のベッドの上に彼女を横たえた。
「後は俺に任せて休んでいて。夕飯はシチューで良かったよね?」
「リンクばかりにやってもらう訳にはいきません。私も手伝います」
旅を経験したから分かったことだ。食事を用意するのだって、食材の調達から調理、後片付けとやることは多い。姫であった頃は知らずとも良かったことなのだろうが、ただのゼルダとなった今となっては、リンクばかりに押し付けてはいられない。
彼の隣を歩いて行けるように頑張ろうと決めたばかりなのだ。両手を握りしめるゼルダの意気込みとは裏腹に、リンクの言葉は甘やかだった。
「いいから。今は無理しないで。俺がゼルダを甘やかしたい気分なんだ」
「そんなに甘やかされたら、駄目になっちゃいます……」
「それはそれでいいかも」
「私が嫌です」
「はは、言うと思った」
でも、俺がお世話したいと思ってるってことは覚えておいて。
リンクの言葉に、ゼルダは唇を尖らせた。
「リンクは私を甘やかしすぎです。……もう、御付ではないのですから」
「俺ってばどうも、お世話したがりみたい。好きな子には尽くすタイプかも?」
「す、好きな子って……」
やることは一通りやったというのに、こんな風に面と向かって好きな子なんて言われてしまうと、照れてしまう。顔を真っ赤にして俯くゼルダを前に、リンクもまた照れ臭そうに鼻の頭を掻いた。
「そりゃあ勿論……ゼルダのことだけど」
「……はい」
逸らしていた視線がぱちりと合う。熱を帯びた眼差しだった。その視線に囚われてしまう。
うるさいくらいに心臓はドキドキと鼓動を打っていた。瞼を閉じる。リンクの影が降ってくる。
「ん……」
待ちわびていた感触が唇に触れて、ゼルダは吐息を吐いた。
キスするのが好きだ。そういう自分に気が付いたのも、ここ最近のこと。リンクの傍にいると、どんどん新しい自分に気が付いていく。
「……っ、名残惜しいけど、このくらいで」
これ以上やると、歯止めが利かなくなりそうだ。
口にして身体を離したリンクの頬は薄っすらと赤い。照れ臭そうにそっぽを向く彼の仕草を可愛いと思う反面、離れて欲しくないという気持ちも確かにゼルダの中にはあって。
「離してほしくないと言ったら、もうちょっと一緒にいてくれますか……?」
ねだるように見上げてみれば、驚いたような空色の瞳と目が合った。
「えっと。それって、その……誘ってる?」
恥ずかしさのあまりはい、ともいいえ、とも言えずに真っ赤になっていると、リンクは好意的に受け取ったようだ。
「んと……それじゃあ、遠慮なく」
律義に向き合って、急に真面目な顔になるのだからやっぱり心臓がドキドキしてしまう。
「いただきます」
ぎしり、と一人用のベッドが軋む音がした。優しくベッドの上に押し倒される。見上げると、リンクの瞳と目線が合った。
秋の空を思わせる色だった。
ぽっかりと浮かぶ千切れ雲も全部受け入れる青。吸い込まれそうなその瞳の中に、ゼルダの姿が浮かび上がっている。
もう初めてじゃない。リンクがどんな風に余裕を無くして、どんな風に声を上げるのかだって知っている。知っているのに、もっと見たいと思う。もっとたくさん彼を感じていたい。心地よくなって欲しいと思うし、心地よさを感じたいとも思う。そういう幸せを掴んだのだと、多分、もっと実感したいのだ。
リンクの指先がブラウスの裾から差し込まれ、肌に直に触れるのが分かった。
「ひゃ……っ」
咄嗟に声が零れてしまって、ゼルダは慌てて口を閉じた。どうせ先に進んでしまえば意味を成さないと分かっていても、まだ恥ずかしいものは恥ずかしい。
そんな乙女心など知る由もないリンクの指先がゼルダの素肌を露わにしていく。もはや服を脱がせることに躊躇うこともなく、元来器用なリンクはあっという間にゼルダのブラウスを剥ぎ取ってしまった。
「あの……そんな、見ないで……」
薄暗くなってきたとはいえ、まだ日は沈み切っていない。既に見られているとはいえ、こんな風に明るい場所でまじまじと見つめられるのは落ち着かなくて、ゼルダは視線を彷徨わせた。
「どうして? こんなに綺麗なのに……」
「は、恥ずかしいです……」
「これからもっと恥ずかしいことするのに?」
「……リンクが意地悪です」
「ごめん、ゼルダが可愛くって」
つい。口にしたリンクが目を細めたのが分かって、ゼルダはドキリとした。なんだか少しだけ、リンクが大人っぽく見えたのだ。……より男性的と言った方が良いのかもしれない。なんだか色っぽくて目が離せない。
ゼルダがドキドキとしている目の前で、リンクもまた上着を脱いでいった。よく引き締まった身体だった。露わになった胸元はゼルダのそれとは大きく異なっている。初めての夜、その傷跡を含めて確かに見た筈なのに、どうしてだか目が離せない。ゼルダが凝視していると、リンクは少し大げさに服から頭を抜いて、ベッドサイドに放り投げてしまった。お互いに上半身生まれたままの姿になると、これからすることを否が応でも強く意識させられてしまう。
伸びてきた指先が胸のふくらみに触れるのが分かった。
「ん……っ」
外気に晒されて、まるで肌が過敏になったみたいだった。リンクが触れたところが熱を帯びる。身体の奥がぞわぞわする。
理性が働いて、どう反応していいのか分かりかねているゼルダの唇に、リンクの唇が降ってくる。驚きに薄く開いた口内を見逃すことなく、リンクの舌が侵入してくるのが分かった。
「ん、ふぅ……っあ」
まるで濁流のようなキスだった。ゼルダの中を滅茶苦茶にしてしまうような、そんな激しいキス。どうやって呼吸をしたらいいのか分からなくて、息も絶え絶えになりながらリンクにしがみつけば、調子に乗ったのかリンクの指先がゼルダの胸の頂点を摘まみ始めた。親指と人差し指を擦り合わせるように転がされると、もはやどうしていいのか分からない。ようやく呼吸が出来た。多分、口の周りは涎でベトベトになっている。分かってはいるのに、頭の奥がじんわりと痺れていて、拭うということも思い浮かばない。すっかり力が抜けてはあはあと荒い息を零しているゼルダを見下ろして、リンクはうっとりと溜息を吐いた。
「すごく、可愛い」
そのままちゅっと首筋に唇を寄せる。鎖骨。胸の窪み。先ほどから指先で弄られ続けて、すっかり敏感になった頂きにも。
「ふあっ……!」
びくん、と身体が跳ねた。
リンクの熱い舌がその場所に触れる度に、お腹の奥からぞくぞくとしたものが駆け上がってくる。高い声が零れ落ちそうになる口を必死に塞ぎ、ゼルダはリンクの舌から逃れるように身を捩った。しかし、そんなゼルダの抵抗を予感していたかのように、リンクにしっかりと身体を押さえつけられてしまう。
「や、だ……んんっ、リンク……!」
鼻にかかった声を出すのを止められない。
もう何度も舐られて自己主張をするようになった頂きの形を確かめるようにリンクが指先で摘まむのだから、ゼルダの身体は何度も跳ねてしまう。
「駄目なの?」
ゼルダは必死になって声を抑えているというのに、リンクのはどこか余裕のある口ぶりだった。
「ゼルダのここは凄いことになってるのに?」
「……!」
空いているもう片方の手が不意にズボンの中に差し入れられてゼルダの身体はひと際大きく跳ねた。
「あ……ああ……」
もはや誤魔化しようがない。リンクに何度も弄られて、ゼルダのその場所はぐっしょりと濡れそぼっていた。下着などとうの昔に貼り付いてしまっていて、ほとんど機能を果たしていない。
「我慢しないで。俺、ゼルダにもっと気持ち良くなって貰いたい」
ちゅ、と音を立てておへそにキスをされる。それだけで敏感になった体はぞくぞくとしてしまうのだから、手に負えない。まるでリンクに身体を造り替えられてしまったみたいだ。
女は男に比べて快楽を得難いのではなかったのか。殿方を立てるために多少の演技は必要ではなかったのか。教えられたその全てを覆すような気持ち良さの連続で、既にゼルダの息は絶え絶えだった。
「前回は俺のをしてくれたから……」
すっかり力の入らなくなったゼルダが抵抗する間もなく、リンクによってズボンが剥ぎ取られてしまった。それだけでなく、すっかり役割を果たさなくなった下着までもだ。
剥き出しになった太ももの間に割り入ったリンクが身体を捻じ込むのが分かった。
「今日は俺がゼルダを良くするね」
「え? リンク……きゃあっ!?」
ゼルダが呆気に取られている隙に、脚を大きく開かれてしまう。その最奥にあるゼルダの泉に顔を寄せたと思うと、リンクはまるで犬が水を飲むように舌を付け始めたのだ。
「や、リンク……! そんなとこ……っ!!」
「ゼルダだって……ん、俺の舐めてくれたし……」
「それとこれとは、ひゃうっ、ち、違いますうぅ……!」
「一緒だって」
じゅる、とわざと音を立てられるとどうしようもなくぞくぞくしてしまう。しかもリンクは触れながら、ゼルダがどう感じているのか観察までしているようで、次第に良いところばかりを攻め立てるようになるのだから敵わない。
「ん、ゼルダのここ……」
「やっ、んんんっ、だめぇ……!」
敏感な花芯を音を立てて啜られてしまえば、もはや成す術もなかった。全身をガクガクと震わせて、必死でゼルダはシーツを握り締めた。我慢できない。高い声が零れてしまう。いやいやをする子供のように必死で首を振れども、リンクは手を緩めるどころか、さらに吸い付いて来るのだ。
「~~~~っ!」
ピン、と足を伸ばし、ゼルダは高い声を上げて果てた。
はあはあと全身で息をしている。まるで体中に電流を流されたみたいに、どこもかしこも敏感になっていた。涙で滲む世界の中に、ぼんやりとリンクの姿が映り込んでいる。
「りん、く……」
ねだる様に手を伸ばすと、優しく握り返されてゼルダはそれでようやく安心出来た。ふにゃ、と口元が緩む。身体はまだびくびくとしているけれど、リンクに触れていると不思議と安心出来た。
「和んでいるところ申し訳ないんだけど……」
困ったようなリンクの顔。間近に迫ったその顔が、すっと視線を下ろす。釣られるようにしてゼルダも視線を下げると、彼はいつの間にか下着を取り払っていた。勿論その場所には、立派にそそり立っている彼自身がそこにある。
「中、挿れるよ……!」
「えっ、リンク、待っ……!?」
全身に込み上げ来るものがあって、ゼルダは思わず唇を閉じた。
高く持ち上げられたその場所には、すっかり大きく膨らんだリンクが侵入して来ている。既にリンクのことを受け入れていたその場所は、まるで彼が来ることを待ち望んでいたかのようだった。
「……!!」
お腹の奥がきゅんきゅんと疼いている。
痛いとか、異物感があるだとか、そういう感覚はすでになかった。ただ、待ち望んでいたものがゼルダの中を訪れた。そういう多幸感。
「ゼルダの中、熱くて、めちゃくちゃ気持ちがいい……」
ゼルダの中を行き来するリンクの額には玉のような汗が浮かんでいた。吐く息も、寄せられた眉も、リンクの何もかもを抱きしめたくなって、ぎゅっと手のひらを握る。握り返してくれる指先は温かい。
「あ……っ!」
丁度花芯の裏側に当たるところを擦られて、ゼルダは咄嗟に声を上げた。
「ここ?」
「え、あっ!? あんっ!」
高い声が零れてしまう。
リンクがその場所を擦る度に、お腹の奥がきゅんとしてしまってどうしようもなく反応をしてしまう。ほとんど涙目になって、ゼルダはリンクのことを見上げた。
「……っ」
ずん、と強烈に押し上げられて、まるで世界が回るようだった。気持ちが良いところ。その場所ばかりを狙いすましたように、リンクが何度も突き上げてくる。濁流のような快楽に何もかもが押し流される。
「あ、や、りん、くっ、そんな」
「ゼルダ、可愛い」
「だめ、そこ……ばっかりぃ……!!」
「すごい締め付けて、きて、ナカも、熱くて……!」
「あっ、ああ……っ!」
もはや声を抑えていられない。髪を振り乱して、込み上げてくる得体のしれない何かに必死に耐える。そうでもしないと、我慢しているものが零れてしまいそうになるから。
「我慢、しないで……」
「や、だめ……だめ……っ」
「全部見せて」
「あああ……っ!!」
ひと際深く抉られる。もはや堪えていることもままならなくなって、ゼルダは叫ぶように口にした。
「りんく、私っ、んん……出ちゃう……」
「いい、よっ、俺も、もう……っ」
堪えていたものが溢れてしまう。ぷしゃっと跳ねた水音と共に、ゼルダはリンクの指を握り締めたまま高い声を上げたのだった。
* * *
飛んでいた意識が戻ってきたのは、それから少し経ってのことだった。
(べたべたしてます……)
意識を失う直前、何かあったような……? 首を捻ったところで、ぱちりと空色の瞳と目線が合う。
「起きた?」
「あ、はい。起きました……」
口にしてから、急に気恥ずかしさが込み上げてきてゼルダは俯いた。すっかりリンクに翻弄されて、はしたない姿を見せてしまった気がする。
「あの……私」
最後の方で、あの。もしかしたら。
とんでもないことをしでかしてしまったのではないだろうか。曖昧だった記憶が口にすると鮮明になってきて、ゼルダは次第に青ざめていった。こんな年齢になって、まさか粗相を。
そんなゼルダの様子に気が付いたのかどうかは分からないが、リンクはあっけらかんとした様子だった。
「潮ってあんな風に吹くんだね。俺、初めて見たよ」
「しお……?」
「うん。女の人が気持ち良くなると、稀にそういうことがあるらしいよ」
俺もあんまりよく知らないんだけど、多分そういうことなんだと思う。リンクの言葉に、ゼルダは目を白黒させた。
気持ち良くなると? 潮を吹く?
そんなことは少なくとも、教育の中で聞かされたことはなかった。……考えるに、王族にとっての性交渉はあくまで子を作るためのものであって、快楽を求めるものではないからなのだろう。そう結論付けて、ゼルダはリンクをじっと見つめる。
「どうかした?」
「……リンクだから、って思ったんです」
「そうじゃなきゃ、困るんですけど」
「ふふ、そうですね」
見つめて、声を上げて、微笑んで。
そういう人が隣にいてくれることが本当に幸せなんだと思う。
「ねえ、ぎゅっとしていいですか」
「勿論」
手のひらを伸ばすと、しっとりとした素肌の感触がある。嬉しくなってすりすりと頬ずりをすると温かい。心地良くなってうっとりと目を細めていると、不意に強く肩を押さえられた。
「……ごめん」
「え?」
「やっぱ、我慢できない」
くるりとひっくり返されて、シーツに押し付けられる。疑問符を浮かべる間もなく、脚の付け根に熱が押し当てられて、ゼルダは目を剥いた。
「さっきしたばかりなのに……!」
「もう息子は元気になりました」
酷い。口にするよりも先に、ずん、と押し込まれる。途端、ゼルダの中はきゅっと収縮して、痺れるほどの心地よさが脳髄を支配してしまった。
「ひっ、あっ」
零す声は甘い。このまま一気に駆け上がる予感を感じながら、恋人はとてつもなく体力があって、強靭な回復力を持った勇者であったということを思い出してしまったのだった。